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「あずかりやさん~まぼろしチャーハン~」のあらすじをネタバレありで紹介

あずかりやさん・まぼろしチャーハン 読書
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大山淳子さんの小説「あずかりやさん」シリーズは大人気で、続編が次々に出ています。「あずかりやさん~まぼろしチャーハン~」は第4弾。「一日百円で、なんでもおあずかりします」という、明日町こんぺいとう商店街にあるあずかりやさん。店主は目は見えないけれど、抜群の記憶力と耳を持つ背の高いイケメン・桐島透。桐島青年の誠実なあたたかさに癒されます。

あずかりやさんシリーズについて

「あずかりやさん」は、2024年7月現在、第5弾まで続編が出ている、大山淳子さんの人気シリーズ小説です。

あずかりやさんシリーズの読む順番や、あずかりやさんとはどんな物語なのかについては、以下の記事をご覧ください。

第1話 ラブレター

第1話ラブレターは、前作であるあずかりやさんシリーズ第3弾「あずかりやさん~彼女の青い鳥~」の第3話青い鳥第5話彼女の犯行に登場する、一ノ瀬はずみちゃんのその後がわかる物語です。

一ノ瀬はずみちゃんは、小児がんで5歳まで生きられないと言われながらも、15歳まで生きた中学3年生の女の子でした。

ところが再発し、また闘病することになり、好きなひとへの想いを綴ったラブレターをあずかりやさんにあずけます。

半年後、自分が引き取りに来なかったら、死んでしまっているだろうからポストに投函してほしいと店主に託して。

詳しくは以下の記事でどうぞ。

さて、第1話ラブレターの語り手は、大学2年生の栗原一歩くん。上記のはずみちゃんのあずかりやさん来店から5年が経っています。

物語は、クリスマスイブ、カフェのひどく寒いテラス席であるひとを待つ一歩くんの語りで始まります。

5年前、はずみちゃんのラブレターは、想い人である栗原翔太くん宛てに届きました。それを郵便受けで見つけて、翔太くんに渡したのが、翔太くんの二卵性双生児の兄である一歩くん。

ところが、届いたタイミングは最悪でした。翔太くんの第一志望の高校の推薦がもらえなかった日だったのです。

翔太くんは、一歩くん曰く、小学校の頃からもてたそう。

  • さっぱりした顔
  • 運動神経抜群で中学ではバスケットボール部エース
  • 背が高く手足も長い
  • 何事にも一途
  • 部屋は汚い
  • バレンタインにはお菓子屋を開けるほどチョコをもらう

一方の兄・一歩くんは

  • 顔は翔太くんよりいいが近眼で小2からメガネのせいで周知されず
  • 運動はまったくダメ
  • 平均的な身長体重
  • 成績は良くて体育以外5
  • バレンタインチョコはお母さんからもらう

このあたりの一歩くんの語りがおもしろいので、ぜひ実際に読んでみてほしいところです。

そんな翔太くんと同じ空間にいるのを避けるため、勉強好きな一歩くんは中学受験をし、みごと私立の中高一貫男子校に合格しました。翔太くんは公立中学で、はずみちゃんと同じ学校です。

終業式を終えて郵便受けを見た一歩くんは、ちょっとしたやっかみで、ラブレターをお母さんのいる前でそれとわかるように渡します。

翔太くんはいらついたようにテーブルを叩き、2階へ上がってしまいました。

一歩くんは、自分のやっかみのせいでラブレターが読まれないのではと気にします。

そして、次の日、お母さんも翔太くんも出かけている間に、読まれたかどうかを確認するため翔太くんの部屋に入ります。

汚い部屋の中、封筒はなんと干からびたバナナの皮とともにゴミ箱の中でした。開封済みなので読まれてはいるようです。

後からわかるのですが、翔太くんには他校に彼女がいて、もらったラブレターや告白には相手をしていなかったよう。

一歩くんは、その後の自分の行動は空腹のせいだったと振り返りますが、そのラブレターをごみ箱から救出し、中を読んでしまいます。

そこには翔太くんへの想いがこれでもかと羅列され、でも何も翔太くんに求めていないという、一歩くん曰く圧倒的な純粋さがありました。

一歩くんはそのエネルギーに打たれ、感動して涙します。

しかし同時に、一方的に向けられた想いに、受験を控え推薦を取れなかった今の翔太くんにとっては騒音だろうとも理解します。

そしてその勢いで、一歩くんは残っていた年賀状に、「あけましておめでとう ガンバレ」と書いて、差出人は「栗原」だけにして、はずみちゃん宛てに出したのでした。

一歩くんにしてみれば、自分も栗原だから嘘ではないし、はずみちゃんにしてみれば想い人から年賀状が届いたことになるという考えだったのです。

その後、翔太くんは第二志望でバスケ部が充実した都立高校に合格して、無事に中学を卒業します。

その時の卒業アルバムをめぐって、一歩くんは、はずみちゃんが病気で入院していたことを知ります。

そしてあのラブレターを読み返し、遺書だったのかとも思え、そのパワーにまた涙します。


そしてラブレターが届いた日から5年が経ちました。

翔太くんは、高校でバスケに挫折するも、一浪して大学に入り一人暮らし。他校の彼女とはずっと続いており、体育の教師になってバスケ部の顧問になるのを夢見ているという、一途な彼のまま。

一歩くんは、実家暮らしで大学2年生。そしてこの5年、何かあるとはずみちゃんのラブレターを読み返し、パワーをもらっていました。

そんな一歩くんに、なんとはずみちゃんからあの年賀状の返事が届きます。

「あけましておめでとう がんばります」

そして宛名はなんと一歩くん。

一歩くんは自分宛てに届いたことにあせりますが、はずみちゃんが生きていたことを喜びます。

そして、クリスマスイブの午後3時にテラス席で待っている、とクリスマスカードを書いたのでした。

カフェでのふたりの出会いは、ぜひ実際に読んでみていただきたいので割愛しますが、はずみちゃんは生きていました。

はずみちゃんの治療は半年では終わらず、2年かかったのでした。

しばらくして家に栗原くんからの年賀状が届いていることを知り、翔太くんが返事をくれたのだなと思います。

そしてはずみちゃんは、がんばって勉強し、2年遅れで高校に進学します。

そんな中、中学の時の翔太くんファンクラブ(そんなものが学校の中にできていたようです)の仲間にあの年賀状を見せたところ、筆跡が違うと。

その仲間は、小学校から翔太くんと同じ学校だったので、一歩くんと言う双子の兄がいることを知っており、当時の文集などから一歩くんの字に間違いないとわかったのでした。

その後、一歩くんはあのラブレターが、あずかりやさんという店にあずけられていたということをはずみちゃんから聞きます。

そして、はずみちゃんが生きていたことを店主にも知らせるべきだと思います。

それにあずかりやさんという店に興味もわきました。

二人は一緒にあずかりやさんを訪ねることにします。

その後のふたりがどうなるかは、「あずかりやさん~まぼろしチャーハン~」を読んでみてください。

ただ個人的に、一歩くんの以下の語りを紹介させてください。

ぼくはがんについてあれこれ調べて、五年生存率という言葉も知ったけど、じゃあ自分はどうかと考えれば、明日交通事故で死ぬかもしれないし、だからそういうことは、意味がないと思うことにした。

「あずかりやさん~まぼろしチャーハン~」大山淳子・ポプラ文庫より

現在がん治療中の私にとって、少し救われた一歩くんの語りでした。

第2話 ツキノワグマ

第2話では、いつものあずかりやさん店主である桐島青年ではなく、普通の青年らしい語り口調を読むことができます。

このお話の語り手は、あずかりやさんにある黒電話

世の中にスマートフォンが浸透し、あずかりやさんレギュラー登場人物のあの相沢さんも、固定電話は必要ないのではないか、と考えるほどになりました。

桐島青年もスマホをおおいに活用しています。

そんな中、あずかりやさんに変わらずにある黒電話に、桐島青年が盲学校時代の同級生である石永さん西野くんから電話がかかってきます。

そのふたりについては「あずかりやさん~桐島くんの青春~」第4話「海を見に行く」をどうぞ。以下の記事であらすじを紹介しています。

語り手である黒電話は、あずかりやさんが和菓子屋だったころからあり、桐島青年の母についての思い出も黒電話から語られます。

その黒電話に、ある日無言電話がかかってきました。小さく咳のような音が聞こえて切れたその電話。

桐島青年の母は喘息持ちです。物語の中で、その電話の主が母だとは明記されませんが、もしかしたらお母さん?と読者に思わせます。

そして、桐島青年も、黒電話も、その電話がまたかかってくることを待ち続けるのでした。

お母さんは、こっそりあずかりやさんを離れたところから見ていたことがあります。そして息子の桐島透に渡したいものを、ある少年に届けさせたことがあります。

それについては「あずかりやさん」第1話「あずかりやさん」をどうぞ。以下の記事であらすじを紹介しています。

この第2話であずけられるものは以下の3つです。

  1. 黄色いセキセイインコのピー子をおばあさんから
  2. 北林洋二郎さんの声(言葉)を黒電話越しに
  3. おじいさんをその息子からあずかる

1のインコについては、第4話で明らかになります。

2については、あずけられてから1640日後として、この第2話「ツキノワグマ」の中で語られ、ある夫婦のあたたかい物語になっています。

3についても、この第2話の中で完結します。介護生活の中の家族、ひととひとのつながりが語られます。

そして後半、あの石永さんからまた電話がかかり、石永さんが結婚を決めたと知らされます。

第3話 まぼろしチャーハン

今作のサブタイトルとなっている「まぼろしチャーハン」です。

今作にはないプロローグやエピローグ的な物語のようで、とても短めの物語になっています。

語り手はある女性で、幼かった頃の思い出を語りつつ、今につなげていきます。

その女性は母子家庭で育ちました。

ひらがなしか読めない幼い頃、お母さんが熱を出して仕事を休み、起き上がれないので保育園に連れて行けなかった日のことを語ります。

お母さんは、アパートの管理人の佐藤さんのところにいさせてもらうように言ったのですが、幼かった女性は管理人さんが佐藤さんと言う名前とは知らず、具合の悪いお母さんにそれ以上聞けなくて、お母さんにパン代としてもらった200円を手に、そのまま家を出ます。

佐藤さんって誰だろうと思いながら、商店街のパン屋でジャムパンを買うと、商店街の中に「さとう」とひらがなで書いたのれんを出した店を見つけます。そう、あずかりやさんです。

佐藤さんはここだと思った幼かった女性は、あずかりやさんに入ります。

そこで店主・桐島透に会い、「一日百円で、なんでもおあずかりします」という説明を受けて、残っていた100円玉を渡したのです。

女性はあずかりやさんで、お絵描きをしたり、あずかりやさんに借りた縄跳びをしたりして過ごします。

お昼になると、お店を閉めたあずかりやさんがチャーハンを作ってくれて、「ジャムパンはおやつにしたらどうですか」と言ってくれたので、一緒にチャーハンを食べます。

そのチャーハンがおいしすぎて、生まれて初めてのおかわりをします。

おかわりでお腹いっぱいの女性は、おやつに食べられなかったジャムパンをあずかりやさんにあげました。

あずかりやさんは、お母さんにと夏蜜柑をくれ、それを帰ってお母さんに渡してあずかりやさんの話をすると、お母さんは少し泣いてしまいます。

次の日、お母さんはあずかりやさんにお礼を言うため訪ねて、チャーハンの作り方を教わります。

その時、あずかりやさんは実際に作ってみてくれて、お母さんも食べたら本当においしかったそう。

店主・桐島透のチャーハンの材料は、卵とおかかだけ。

お母さんは同じように作りますが、あずかりやさんの味に及びません。何度作っても。

そこで親子がチャーハンにつけた名前が「まぼろしチャーハン」。

女性は、きっと、心細かった自分とお母さんに、知らない人があたたかい食べ物をこしらえてくれたことが、あのおいしさになったのだろうと考えます。

そして大人になった女性は、いわゆるこども食堂を開くのです。

こどもは100円、大人は500円、困っていたら無料でも。

メニューにはまぼろしチャーハンもあります。

短いけれど、とってもあたたかいお話です。

第4話 高倉健の夢

第4話は、河川敷で暮らすホームレスの男性3人のお話。

河川敷に集まるホームレスのひとたちは、みんな本名を名乗りたくないひとばかり。

だから、河川敷に来るとそれぞれ好きな俳優の名前を自分の名前にしていました。

3人の男性の名前は、高倉健緒形拳石原裕次郎。高齢者に差し掛かった頃。

そして語り手は、高倉健が河川敷で拾ったトランク式の鞄

実はこの鞄、皮が擦り切れて留め具も錆びた古いものですが、有名ブランドの150年以上前の値打ちもの

そうとは知らず3人は、この鞄に少しずつ稼いだお金を入れて貯めています。

風呂付きのアパートを借りるという夢のために。

河川敷では10年前、都の自立支援施策で、ホームレスのひとたちを福祉施設に移し、住処を強制撤去していました。

でも、施設での暮らしが合わないひともいて、3人は抜け出してきてまた一緒に河川敷で暮らしていたのです。

ひっそり目立たないように暮らすには、身綺麗にする必要がありましたが、川での行水は人目につくし冬は寒いしで、お風呂付きのアパートが必要だと考えた3人。ただ、そのための資金を貯めるのは3人にはとてもむずかしいことでした。

そんな中、明日、警察が河川敷に来るという情報が入りました。

とりあえず、明日の警察の取り調べをどうにかやり過ごさねばなりません。

そのために鞄を隠したい3人。

相談の上、以前同じく河川敷にいた浅丘ルリ子が、施設では飼えないインコのピー子をあずけたというあずかりやにあずけてはどうかという話になります。

そう、第2話ツキノワグマに登場した、黄色いセキセイインコのピー子をあずけに来たおばあさんが浅丘ルリ子です。

とにかく3人はあずかりやに行ってみることにします。人目を避けて夜に。

ところがどの店も閉まっていてあずかりやがわからず、3人は引き戸の店の前に座り込みます。実はそここそあずかりやさんでした。

ここで高倉健が、自分の過去を語り始めるのですが、そこへ白猫の社長が登場し、にゃおにゃお泣き始めます。

その声に気づいた店主・桐島透が戸を開け、3人に気づき、ここがあずかりやだと言って3人を中に入れます。夜中の1時なのに。

ピー子がどうなったかを聞くと、近くの小学校で飼われていて、みんなの人気者だと店主は答えます。

店主の桐島青年の独特の雰囲気に、高倉健は自分たちの夢を語り、鞄をあずかってほしいと言いながら泣いてしまいます。

この泣いてしまった理由について、鞄(小生)は以下のように考えます。

小生には少しわかる。この店には「ゆるし」の空気があるのだ。誰をも拒絶せず受け入れる底なしの「赦し」だ。さげすみやあざけりなどの濁りはいっさいない。三人はまだ鎧を脱いでいないものの、肩の力を抜くくらいの安堵を感じているだろう。

「あずかりやさん~まぼろしチャーハン~」大山淳子・ポプラ文庫より

こんなお店、ぜひ行ってみたいです。桐島透に会ってみたい。

この後、なんと桐島青年は3人に対し、自分の家のお風呂に入らないかと遠慮がちに言うのです。

3人が臭うなんて絶対に言いません。今日は寒くて待ってる間冷えたでしょう、と。

時間があれば温まりませんか、と。

3人は仰天して、お湯をためようと立ち上がった桐島青年に「ありがとう!先を急ぐので」と言って店を出ます。

緒形拳と石原裕次郎も泣き顔です。

この桐島青年の器の大きさはどうやって育まれたものなのでしょう。

そして桐島青年は、あずかった鞄を開けることはせず、乾いた皮をクリームで磨き、留め具の錆びを落としました。


次の日の夜、約束通り3人は鞄を引き取りに現れます。服はそのままだけれど、体は川で洗って。

昨夜、元気にしているピー子を見たのだそう。

そこで桐島青年から3人に相談が。

鞄の手入れをした桐島青年は、鞄の留め具にルイ・ヴィトンの刻印を見つけたのです。手触りで。

そして、鞄の中のお金よりはるかに高額でこの鞄が売れるはずで、そうすれば3人の夢がかなうと。

でも、3人を相手にしてくれる店は無いと考えた3人は、桐島青年に手数料を払うから売却してほしいと頼みます。

桐島青年が売る場合、方法はインターネットです。

100万円と設定して売りに出しましたが、翌日に買い手がつきました。

買い手はなんと、鞄のもともとの持ち主の娘。

その後の展開がとても気持ちいいので、ぜひ実際に読んでみてください。

高倉健と石原裕次郎の過去の話や、鞄がなぜ河川敷に落ちていたのか、鞄のもともとの持ち主はいかなる人物だったのか、桐島青年が3人にしたことは、等々、読み応えのある内容です。

第5話 文人木

文人木ぶんじんぎ』をご存知でしょうか。私はこの物語で知りました。

文人木というのは、盆栽の世界でよく使われる言葉であり、「文人が好む木」という意味である。文人とは、書画や詩文を嗜む知識層を指す。そうした風流人が、床の間に飾って茶を飲めるようなたたずまいの木、という意味である。

どういう見た目かというと、幹に年月による厚みや枯れが表れており、主幹は細くてある程度の高さを持ち、枝の数は最小限に抑えられている。どっしり、、、、の対極にあり、その飄々ひょうひょうとしたたたずまいが余白を意識させ、独特の世界観を醸し出すのだ。

「あずかりやさん~まぼろしチャーハン~」大山淳子・ポプラ文庫より

この第5話の語り手は、その文人木である盆栽の皐月

物語冒頭の半年前に亡くなった、日本屈指の盆栽家である上永三郎太の作品です。

三郎太の手による盆栽たちは、遺言に従って多額の香典と引き換えに譲られていきましたが、この皐月さつきだけは、妻のイトが手元に残し、孫の一人である章人に託されました。

この文人木である皐月は、もともと山奥の岩肌の割れ目に自生していて、川の増水で水没したりと過酷な環境で咲いていました。

その川に、大けがを負って流れてきたのが若き日の三郎太。

三郎太は世界中を旅するのが好きな若者でした。

でも足に大けがをして川に流され、這い上がったものの死を覚悟していた時、目に入ったのがその皐月だったのです。

花盛りだった皐月は三郎太をほほ笑ませ、三郎太は一命をとりとめてヘリコプターで救助されました。

その時、三郎太は皐月を一枝持ち帰ります。それが語り手の文人木です。

リハビリをした病院の看護師がイトであり、イトが皐月を挿し木してくれました。

三郎太の足は治らず、旅はできなくなりましたが、イトが育ててくれた皐月に涙し、盆栽の道に入ります。

イトとは夫婦に。

皐月と、三郎太の孫である章人あきひとは、章人が5歳の頃、遊ぶのを禁じられていた庭でボールを蹴り、皐月に当てて主幹を裂いてしまい、三郎太に突き飛ばされるという初対面をします。

三郎太は皐月を生かすために手を施し、主幹を捨てて文人木として生き返らせました。


章人は、三郎太と同居していた孫で学力優秀。でもひとところにじっとしていられない性分で、14歳の時にイギリスのクルーズ船にこっそり無銭乗船した問題児。

ほかの孫たちはそれぞれ自立していて、章人だけがへそ曲がりと見られていましたが、ある意味、若き日の三郎太に一番近いようにも感じます。

章人は、文人木の皐月に「社会人として不合格な奴」と称されていて、礼儀がなっていない20歳の青年。

でも、同居していた祖父のしていたことは見よう見まねで覚えていたのか、扱いは雑でもイトから押し付けられた皐月を枯らすことなく育てていました。

その章人が、旅に出るから2週間、皐月を枯らさずにあずかってほしいとあずかりやさんにやってきます。

店主・桐島透はさわって盆栽を確かめ、それが文人木であることも、皐月であることも当ててみせ、章人を驚かせて合格と言わせます。

桐島透!なんでも手触りでわかるって!!どれだけ学んでいるのかとびっくりします。

桐島青年は、言われた注意事項を忠実に守り、それだけでなく文人木として最適な床の間での鑑賞もします。

この床の間に置かれた時、第2話ツキノワグマの黒電話と並び、黒電話にかかってくる電話に出た桐島青年が、若者らしい話し方をするのも聞きます。

皐月はすっかり桐島青年を気に入り、いっそのこと章人が来なければいいとさえ思いますが、なんと本当に章人はあずかり期限を過ぎても現れません。

それでも桐島青年は、自分ではハサミを入れることはできないと考え、かと言って処分もできず、午後は店先に置いて、ただそのまま世話をして2年が経ちます。


ある日、店にやってきて壺をあずけた和服の女性。

その女性は文人木の皐月に感嘆したかと思うと、店主が目が見えないことをいいことに、なんと盗もうと試み、重さで無理とわかると、文人木として一番重要で一番花をつけていた枝をねじ切ってしまったのです。

気配に気づいた桐島青年から、枝を持って逃げた女性。

こういうとき、目が見えない桐島青年は追いかけられません。

さて、この後の皐月はどうなったか、章人はどうしたのか、「あずかりやさん~まぼろしチャーハン~」をぜひ読んでみてください。

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