第175回直木賞受賞作である朝倉かすみさんの「けんぐゎい」を読みました。テレビで拝見した朝倉かすみさんは、淡いピンクの髪色と、同じく淡いピンクのブラウスで、上品な女性という印象でした。ですが表紙はちょっと怖い感じです。あらすじを聞いても、なかなかにヘビーな内容なのか?と思わされます。今回はその「けんぐゎい」を実際に読んでみた感想です。
けんぐゎい
「けんぐゎい」とは何?と思いました。
「けんぐゎい」とは「圏外」のことで、この物語には、圏外とみなされてしまう世間のはみ出し者のような人たちが出てきます。
主人公のふゆも、圏外とされてしまう人物でした。
以下、出版社である光文社公式サイトにあるあらすじです。
第175回直木賞受賞作
利発だが酷い痘痕の姉ふゆ。逆上せ癖で縹緻よしの妹りよ。幼くして父を亡くし、ふゆは手習師匠の手伝いに、りよは船宿の下女奉公に出された。師匠の養子で禍々しいほどに歪んだ性癖をもつ宗三郎から手籠めにされたふゆは懐妊するが、現人神と崇められる女医者と出逢い、彼女の人生は大きく変わっていく。 自我に目覚めた主人公が、女の生と向き合う、時代小説の新しい扉!
物語の舞台は江戸時代です。
作者の朝倉かすみさんは、ずっと時代小説が書きたかったのだそうです。
やっと書けた時代小説が直木賞受賞となりました。
朝倉かすみさんと言えば、映画化もされた山本周五郎賞受賞の「平場の月」が有名です。
「けんぐゎい」は江戸言葉が多く、正直意味がわからずに調べながらの読書になった部分もありました。
朝倉かすみさんは古文書の講座に通われていたそうです。
「けんぐゎい」の目次は以下のようになっています。
- 第一章 ウニコール
- 第二章 りんぼ
- 第三章 ガストホイス
- 第四章 くゎいぶつ
「けんぐゎい」が圏外と知ってからは、第四章の「くゎいぶつ」は想像がつきましたが、ほかはいったい何のことやらの状態でした。
わかる人にはわかるのでしょうけれど、私と同じく何のことやらの人は、ぜひ読んで答え合わせをしてみてください。
ただ「ガストホイス」についてだけ言いますと、オランダ語で病院の意味だとか。
あらすじにあるように、主人公のふゆは女医者との出会いで人生が変わるのですが、そこでガストホイスが出てきます。
「けんぐゎい」前半の感想
前半は、若干辛くなる内容でした。
なぜ女性はいつも虐げられるのか、貧しい人は夢が見られないのか、と切なくなります。
ふゆの「ずっと、こどものままでいられたらいいのに」という想いに、何とも言えない気持ちになりました。
こどもの頃だって、恵まれた状況ではないのです。
奉公先の主人に手籠めにされる、という展開は、時代小説にもドラマの時代劇にもよく登場します。
本当に、当たり前のようによくあることだったのでしょうね。
だから、ふゆの妹のりよが主人に手籠めにされても、母は叱って追い返してしまうのでしょう。
今だったら考えられませんし、自分の娘がそんな目にあったらと想像しただけでたまらないです。
女性は跡取りを産む道具、男性を悦ばせるための道具、そんな風に見られてしまうことも、それをしかたのないことだと諦めている女性たちに対しても、どうにもできない苛立ちとモヤモヤを感じました。
そして、諦めて耐えるしか生きる手立てがないという貧しさにも。
ふゆが恋をした宗三郎
あらすじにもあるように、ふゆは師匠の養子の宗三郎に手籠めにされてしまいます。
本当にひどいやり方で。
最初はふゆは、宗三郎に恋をしていたのです。
そのため余計に残酷に思えました。
宗三郎には、ほのという妻がいますが、ふゆを含めて3人の奉公人に手を出しています。
そのうちのひとりつるは、私はふゆより好きな登場人物かもしれません。
この宗三郎が最後にどうなるかは、驚きましたが、それが一番いいおさめかたのような気がしています。
けんぐゎいっ子
ただひとり、宗三郎の子どもを妊娠したふゆは、宗三郎に追い出されることになります。
その時持たされた5両を、ふゆは「お守りだ」と言って、つると、かめと、こつるに1両ずつ握らせます。
それはふゆが、「おれらけんぐゎいっ子、いつかけんぐゎいっ子の国をひらこう」と話しあった仲間でした。
本当は、妹のりよにも渡したかったのですが、この時には渡せませんでした。
私はこのシーンが好きです。
少し泣きそうになりました。
「けんぐゎい」後半の感想
以下ネタバレ注意
ふゆが出会った女医者はおこまさま。
おこまさまは、「女は、産まされてはならぬのである」「産めないことがあってはならぬのである」を信条とする産医でした。
非常に爽快な気分になったのは、おこまさまが宗三郎の嘘をしっかり見抜いてくれていたことです。
おこまさまと出会ったふゆは、おこまさまにその賢さをかわれ、跡継ぎとなります。
そしてけんぐゎいっ子仲間を呼び寄せるのです。
ちゅう太という男
物語中盤に登場するちゅう太は、ふゆの母が目をつけた若い男で、なんと子どももできて夫婦になります。
ふゆの母は、困ったところのある人なので、最初はこのちゅう太も、ついなびいてしまったけれど逃げ出すのではないかと思っていました。
ところがこのちゅう太、かなりの重要人物でした。
おこまさまが目をかけた才能の持ち主であり、後にふゆを手助けしてくれる男です。
そして、ふゆの母の困ったところも含めて愛してくれていた男でした。
ほのが言う籤引き
宗三郎の妻のほのも、実はけんぐゎいっ子と言える人物でした。
裕福な家に生まれたお嬢様で美しい娘でしたが、幼い頃に大やけどを負っていて、着物で見えない体の半分に醜いやけどの跡があるのです。
そのため、ほのは、痘痕のひどいふゆは自分とおんなじだ、と思っていました。
そのほのの人生観は、すべて籤引きだというもの。
「我が身に起こるのは、みいんな、この手で選み取ったものなのよ」と言います。
ふゆは、自分の身に起きた不幸は、自分が選んだものなんかではないと反発します。
そしてこれが、物語最後のテーマとつながっていくのです。
ふゆは、実験を試みます。
その実験の答えは、この「けんぐゎい」では明かされずに終わりますが、朝倉かすみさんはその結果も書きたいとインタビューに答えていました。
どうなるのか楽しみです。
直木賞受賞作「けんぐゎい」ぜひ読んでみてください。


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