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やさしさを忘れぬうちに「コーヒーが冷めないうちに」第5弾ネタバレありであらすじと感想

読書
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2023年3月に発売された「やさしさを忘れぬうちに」は、映画化もされた「コーヒーが冷めないうちに」の第5弾です。続編はいつ出るんだと思っていたところに、愛媛の田舎から千葉に帰省中の私の目に飛び込んできた電車内の広告が!おおっ、このイラストは!シリーズの装丁のイラストを手掛けたのはマツモトヨーコさんです。ほんわかしたきれいな色のイラスト、今回はグリーン系で3脚の椅子がテーブルを囲んでいて、そのひとつにはランドセルがかかっています。

「やさしさを忘れぬうちに」は「さよならも言えないうちに」のすぐ後?

第2弾「この噓がばれないうちに」では、フニクリフニクラの店主・流さんの娘のミキちゃんが小学校1年生でした。今回の「やさしさを忘れぬうちに」では2歳で登場します。ということは、前作の第4弾「さよならも言えないうちに」が第1弾「コーヒーが冷めないうちに」の翌年を書いていたので、そのすぐ後くらいの物語のようです。

「さよならも言えないうちに」については以下の記事をどうぞ。

またしても数ちゃんの結婚相手とのストーリーが読めないではないかっっ!と思いましたが、著者・川口俊和さんはよほどコーヒーを淹れる役を数ちゃんのままで書きたいか、ただただ引っ張りたいのか、まだお話を練っている最中なのか。

いずれにしても今回も切ない話が4話つまっています。

第一話 離婚した両親に会いに行く少年の話

表紙のマツモトヨーコさんのイラストは、この第一話のシーンなのでしょう。

二人掛けのテーブル席に、数ちゃんが少年のために椅子を追加するのです。その時の少年はランドセルは背負っていません。後日、過去に戻れるか確認するためにひとりでフニクリフニクラを訪ねてきた時の少年は、ピカピカの黒皮のランドセルを背負っています。

少年の名前は桐山ユウキくん、7歳。

ユウキくんには後悔していることがありました。それは、フニクリフニクラで両親から離婚すると聞かされた時に泣いてしまったこと。

え?泣くのは自然だと思うけど?筆者である私もかつて子どもの頃に両親から離婚すると聞かされた時は弟と二人で泣きましたよ。と、私のことは置いておいても、私と同意見だったのは、フニクリフニクラの常連客・二美子さんです。第1弾「コーヒーが冷めないうちに」の最初の物語の主役であり、以降ずっと通う女性。数ちゃんがクールな分、二美子さんが読者寄りな立場でいてくれます。

ユウキくんは本当に両親の幸せを願う、切ないくらいいい子でした。

離婚した後の両親を見て、あの日自分は泣いてはいけなかったと、やり直したいとフニクリフニクラに来たのです。そう思うに至った経緯を知ると、本当に切ないし、できることなら元通り両親と一緒に暮らせるようにしてあげたくなります。

しかし、両親の喧嘩や、それぞれの言い分や、言えずに飲み込んだ不満は、まさに夫婦あるあるな内容で、おそらく共感する人が多いのではないでしょうか。

はたして、ユウキくんは過去に戻ってどうしたか、はぜひ読んでみてください。

第二話 名前のない子供を抱いた女の話

第二話の主人公・恵は、生まれたばかりのわが子と共にフニクリフニクラにやってきます。

付き添ってきたのは看護師の高竹さん。彼女は第1弾「コーヒーが冷めないうちに」の登場人物です。若年性アルツハイマーで記憶を失っていく夫に寄り添う奥さんです。高竹さんも過去に戻ったことがあるので、恵を連れて来たのです。

恵の子にはまだ名前がありません。夫婦で考えたかったのに、夫が傷害致死事件に巻き込まれて死んでしまったからです。その夫が生きている時にもどって名前をつけてもらいたかったのでした。

恵の夫・隆二は、子どものような大人で、恵はこっそり「こどな」と呼んでいました。

隆二は消防士で、人の命を救うのが自分の使命と思っている人でした。子どものように見えて、頭の回転は速く、子どものようなふるまいの中に相手への優しさがある人物です。

恵が過去へもどっての隆二とのやり取りは切ないですが、恵はきっと、隆二の分までがんばるんだろうなと思えるラストでした。

第三話 結婚を許してやれなかった父親の話

第三話の主人公・望月は、妻とふたりでフニクリフニクラを訪ねますが、過去に戻るためのルールを聞いて、帰ってしまいます。どうやら、娘の結婚に反対し、その娘が駆け落ちをしてしまったことを後悔しているように見えました。でも、フニクリフニクラに来たことがない娘には会えないとわかったのです。

ところが、その望月が帰ってしまってすぐ、例の白いワンピースの女の幽霊がゆらゆらと揺れて消え、そこに洋子という女性が現れます。この洋子が望月の娘でした。4年後、望月は亡くなり、この日に望月がフニクリフニクラに来ていたと母から聞いた洋子が、父に会いに未来からやってきたのでした。

洋子は駆け落ち後、荒んだ生活を送っていました。父の望月の勘が当たったのか、相手の男はろくでもない男で、洋子はその男と別れて息子をひとりで育てていました。父とは連絡はとらず、母とだけは連絡を取っていましたが、心配をかけたくなくて別れたことを言えませんでした。

そんな中、洋子は別の男性と出会い結婚を考えますが、その男は詐欺師で、騙されてお金をとられてしまいます。結婚するつもりで退職し、住む場所も手放していたため、もう親に頭を下げるしかないと思ったところへ父の訃報が。

本当のことを話すと、母は一緒に暮らそうと言ってくれましたが、洋子は父への申し訳なさからそうすることができません。そんな娘の洋子に、母はフニクリフニクラのことを教え、父である望月に会ってくるよう言ったのでした。

ところが洋子は、この時店にいた二美子さんが、望月を追いかけようとしたのにつられて席を立ってしまうのです。

フニクリフニクラのルール:過去に戻ってもその席から離れられない

ということで、あっけなく洋子は消えてしまったのでした。

それでも二美子さんは望月を追いかけ、洋子の未来からの来店を告げます。それを聞いた父の望月は、フニクリフニクラへ引き返しました。

この話では、二美子さんの活躍が光ります。

父が娘に言いたかったこととは。やり直したかったこととは。

ちなみに、娘の洋子がもどってしまった未来のフニクリフニクラには、木嶋京子がいました。彼女は、第2弾「この噓がばれないうちに」の登場人物です。京子さんも常連客となって息子を連れてきていました。

第四話 バレンタインチョコを渡せなかった女の話

主人公はつむぎという女性。中学時代と高校時代の思い出から物語は始まります。

つむぎの親友・彩女(あやめ)は中1の時の転入生でとてもきれいな子。彩女に告白する男の子多数。そんなキラキラな彩女が思いがけずつむぎと同じ趣味を持っていることがわかり、仲良くなれました。

でも、つむぎが中学の時告白した男の子には、「彩女のこと好きだから」とふられてしまいます。それはトラウマになりましたが、彩女には言えず、ずっと仲良しで一緒に過ごしました。

高校で好きになった男の子に告白しようと、バレンタインチョコを用意したつむぎは、中学の時のトラウマを思い出し、また彩女を好きだと言われたらと思うと渡せませんでした。

そのまま、大学も一緒のつむぎと彩女。

でも、春休みの間にある噂がつむぎの耳に入ります。チョコを渡せなかった男の子が、彩女にふられたという噂です。仲良しの彩女はなにも悪くないとわかっていながら、大学に入ってから、つむぎは彩女を避けるようになり、そのまま連絡を取らなくなって卒業します。

その6年後、フニクリフニクラを訪ねたつむぎ。店には平井八絵子がいました。平井八絵子も「コーヒーが冷めないうちに」の登場人物です。こうやって、前の作品の登場人物のその後がわかるのも、読者にとってはうれしいです。

さて、つむぎはなぜフニクリフニクラに来たのか。

「バレンタインチョコを渡せなかった女」の意味がわかります。

そしてこの話には、亡くなる前の計さんが登場。まだ若いつむぎと彩女にあたたかいまなざしを向ける計さんが素敵です。

まだまだ続く

第5弾まで来ましたが、まだ語られていないエピソードはありますから、続編を待ちましょう。

4回泣けると言われた「コーヒーが冷めないうちに」ですが、その続編たちも感動のストーリーばかりです。たぶんですが、いずれ数ちゃんも、娘の幸ちゃんの淹れるコーヒーで過去に行くんじゃないでしょうか。いろいろ楽しみです。

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