要約筆記者養成講座でふれた中途失聴・難聴者とは

音から隔てられて・表紙 要約筆記
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要約筆記者養成講座を数回受けて、難聴者のおかれている状況を少しずつわかってきたところで紹介された本があります。1975年に岩波新書から刊行された「音から隔てられて」です。難聴者の中でも特に、中途失聴・難聴者の問題を取り上げた本です。その本を読んで感じたことと、2022年1月から放送されていた、TBS火曜ドラマ「ファイトソング」で描かれていた中途失聴者について感じたことをまとめました。

中途失聴・難聴者の運動に大きな影響を与えた本

生まれつきや、幼少の頃からの聴覚障がいがある人は、話せるようになる前に聞こえにくくなっているため、言語障害も併せ持つ「ろうあ者」である場合が多いです。そのため、手話をコミュニケーション手段としている人の割合が多くなります。

そのろうあ者達は、手話通訳者とともに、早くから自分達の権利のための運動を始めていました。全日本ろうあ連盟は1947年に設立されています。

当時の日本では、本来様々なタイプがいるはずの聴覚障がい者が、「聴覚障がい者」とひとまとめにされていたそうです。人生の半ばで何らかの理由で聴覚障がい者となった人には、ろうあ者とは違う悩みや苦労、困難があるのに、それが社会には理解されていなかったのです。

中途失聴・難聴者自身が声を上げる

ろうあ者とは違う困難を理解してもらうためには、中途失聴・難聴者自身が声を上げなければいけないというメッセージをこめて刊行されたのが「音から隔てられて」でした。

1975年に出た本なので、今とは異なる内容もあるのでしょうが、今まで聞こえていたものが聞こえにくくなっていく恐怖や孤独感は、きっと今も変わらないものだろうと思います。最初に掲載されている当事者たちの手記が、とても強く私の中に残りました。

「音から隔てられて」の手記から

「音から隔てられて」に寄せられた手記では、聴覚を失った理由が様々でした。

病気によるもの、事故によるもの、遺伝によるもの、薬の副作用によるもの。

どの人も「なぜ私が」と思うことでしょう。薬のためであれば、当時の医療体制や担当医師を恨みもしたでしょう。失われていく聴力に絶望して、自ら命を絶つ人も少なくないようです。

その人の能力は変わらないのに、聞こえなくなったためにそれまでの職場にいられなくなったり、望む結婚ができなかったり、行きたい学校で学べなかったりするのです。

行政のサポートも不十分で、役所に行っても、手話や要約筆記のできる職員がいなかったりで相談もできずに帰ってくることもあったようです。

会話に参加できない寂しさ、社会から孤立していく不安、友人だと思っていた人が自分から離れていく絶望感・・・。

そして、失聴とは言っても、外からの音が聞こえなくなっただけで体内の耳鳴りは続くのだと知りました。始終聞こえる耳鳴りの辛さはどんなにか。

ドラマ「ファイトソング」で描かれた中途失聴者

2022年1月から放送されていた、TBS火曜ドラマ「ファイトソング」は、岡田惠和さんのオリジナル脚本です。

(以下ネタバレあり)

主演は清原果耶さんで、有望な空手選手だったのに事故のために夢が断たれ、耳の病気が見つかり、その手術で聴力も失います。暗くなりそうな内容ですが、周りの人たちに支えられ、間宮祥太朗さん演じる一発屋ミュージシャンとの恋や成長が描かれます。

手話は使わない

要約筆記者養成講座で習った通り、ドラマでも中途失聴者は手話を使っていませんでした。唇の動きを読む読話や筆談、スマホアプリでの音声文字変換を使って、失聴者自身は普通に声での会話をしていました。聴覚障がい者の8割は手話ができないのです。

中途失聴者と手話については以下の記事でふれています。

周囲のサポートが必須

ドラマを見ていて感じたのは、周囲のサポートが重要ということです。清原果耶さん演じる主人公は最初、病気のことを誰にも言わずひとりで手術に臨もうとしていました。

しかし、橋本じゅんさん演じる主治医に、周りの助けは絶対に必要だから、誰かに必ず病院に来てもらうようにと言われます。そこで、施設育ちの主人公は、親代わりとなってくれた稲森いずみさん演じる施設長に付き添ってもらいます。

病気のことを知った、菊池風磨さんと藤原さくらさん演じる幼馴染をはじめとする施設のみんなは、聞こえなくなった主人公を支えます。

会話は常に正面で顔を見て、ゆっくり大きく口を開けて話していました。主人公が話す時は、話が終わるまで黙って最後まで聞きます。伝わりにくいことは筆談で。

主人公はハウスクリーニングの仕事をしていますが、訪問先のお客様が話す時はスマホアプリを使っていました。

また、手術前に知り合った、同じように病気で聴力を失った石田ひかりさん演じるお客様の存在も大きかったと思います。自分が聴力を失った後の生活を想像することができたのではないでしょうか。

来客を告げるのは、音のなるチャイムではなくサイレンのように光るランプ。仕事はグラフィックデザイナーでしたが、パソコンやネットをフル活用しているようでした。彼女と主人公がいる場で、大勢で集まって話す時は、プロジェクタースクリーンに字幕を映していました。

このドラマを見たのは、岡田惠和さんのあたたかい脚本のファンだからですが、要約筆記者養成講座に興味を持ったひとつのきっかけにもなったと思います。

手話を使えない聞こえにくいひとのために

「聴覚障がい者」と呼ばれなくとも、耳の聞こえにくいお年寄りもいます。歳をとってから手話をマスターするのは容易ではないでしょう。

そういったひとのためにも、文字での通訳である要約筆記は有効だと感じます。要約筆記者養成講座を受けるうち、その仕事が完全な技術職であるとわかってきました。話し手が思うまま話す内容をその場で要約し、話すスピードに到底追いつかない文字入力で同時通訳するのですから。

このまま挫折することなく続けていけるか、少々自信がなくなってきているのが正直なところですが、できるところまでやってみたいと思います。

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