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「あずかりやさん~桐島くんの青春~」のあらすじをネタバレありで紹介

桐島君の青春 読書
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大山淳子さんの人気小説・「あずかりやさん」の続編となる、シリーズ第2弾の桐島くんの青春。文庫版では、うさぎや書店さんのオリジナルカバーが人気ですが、残念ながらこの2巻・桐島くんの青春のオリジナルカバーをゲットできませんでしたー!とは言え、本来の表紙も、あずかりやさん店内をよくあらわしていて素敵なイラストです。白猫の社長がちゃんといます。それでは、桐島くんの青春のあらすじを一部ネタバレありで紹介します。

「あずかりやさん」とは

「あずかりやさん」の作者は、猫弁シリーズでも知られる、脚本家であり小説家でもある大山淳子さんです。

この物語の舞台となるあずかりやさんは、一日百円でなんでもあずかるというお店です。店主の桐島透は目が見えません。

17歳の時のあるできごとをきっかけに開業します。

「あずかりやさん」シリーズ全体についてや、読む順番、うさぎや書店さんのオリジナルカバーについては以下の記事で紹介しています。

あずがりやさんが舞台の短編集のような形になっていますが、時系列はバラバラです。同じ登場人物のその後が、ほかの話で語られることもあり、同じ場面が別の話でほかのひと目線で語られることもあります。

それではここから、目次の順番に沿って各話のあらすじを紹介していきます。

一部ネタバレを含みますので、ネタバレを避けたい方は上記の記事をどうぞ。ざっとシリーズを紹介しています

プロローグ

最初のプロローグは、宇宙飛行士になり来週月に行く「ぼく」が、中学時代の国語の先生にあてて書いた手紙です。

その先生は、1年生の初めての授業であずかりやさんというお店について生徒たちに話し、自分なら何をあずけたいかをテーマに考えてきて発表するのを宿題にしました。

そこでぼくは「ランドセル」と言ったけど、それは嘘だったと告白しています。

ぼくは、ランドセルを持っていませんでした。

外国で育って、養子縁組をして日本にきたぼくは、それをみんなに知られたくなくてありきたりの内容で発表したのです。

本当は、持っているものすべて養父母にもらったもので、どれも大切で、あずけたいものなどありませんでした。

あずけたいものがない自分を恥じ、嘘をついたことも恥じていたぼくですが、考えが変わります。それを先生に伝えたくて初めて手紙を書いたのでした。

このプロローグは短いですが、「あずかりやさん」というものが、どういう存在なのかを説明してくれている内容になっていると感じました。

他人のものを受け入れ、あずかってくれる場所がある。そのことが心に余裕のようなものをくれていたような気がします。

「あずかりやさん~桐島くんの青春~」大山淳子・ポプラ文庫より

第1話 あくりゅうのブン

あずかりやさんでいつも店主の桐島透が、点字の厚い本を載せて読んでいた『文机ふづくえ』。その文机がこのお話の語り手です。

文机は自分を「小生」と言います。

あずかりやさんに来る前の文机は、檜の無垢材で作られた結構な値段のする家具として店頭にあったようですが、売れ残っていました。

ある日、明治のような着物を着て、ぼさぼさの髪の痩せた男が店に現れ、「ブンヅクエはあるか」と言って文机を買っていきました。その男は「ふづくえ」と読むのを知らなかったようです。

男は、芥川龍之介に憧れて小説を書くもものにならず、たくさんいる友人からは「あくりゅう」と呼ばれていました。あくりゅうは、自分の持ち物に名前をつけていて、文机はブンヅクエだから「ブン」と名付けられました。

あくりゅうの住む古いアパートには、友人がよく泊まりに来ました。あくりゅうは友人には恵まれているようです。

そんな中、あくりゅうの母親がやってきました。「さんざん捜しましたよ」と言って。雰囲気からすると、あくりゅうは実はいいところのお坊ちゃんなのかもしれません。

母親のことをママと呼んでいますが、そのママ曰く、あくりゅうは三浪して大学に入り、三留して卒業して行方不明。夢も、小説家の前にピカソに憧れていたりウロウロしている様子。連れ帰ろうとするママに、友人が来るからとごまかして追い返そうとするあくりゅう。ママは2万円を置いてひとまず帰ります。

そして帰る気のないあくりゅうは、逃走資金を作るため、なんとブンを質屋に入れることにし、やってきた酔っぱらいの友人・青木とともに明日町こんぺいとう商店街へやってきます。酔っ払いの青木が案内した店は、質屋ではなくあずかりやさんです。

ところがもう深夜です。ふたりはあずかりやさんの前で座り込んで話し始めます。

あくりゅうには、中学で教師をする父親がいて、いつも夢を応援してくれた父のことが、あくりゅうは大好きでした。すると話し声に気づいたのか、店の入り口が開き「うちに何か御用ですか」と少年のような店主・桐島透が現れます。

この話は、桐島青年があずがりやさんを開業した1週間後のことであり、あくりゅうと青木は、あずがりやさんの初めてのお客様だったのです。

深夜3時だったのにもかかわらず、桐島青年はふたりを中に入れ、質屋のつもりだったと聞くと、本当の質屋の場所をふたりに親切に教えます。するとあくりゅうは「せっかくの初めての客にライバル店を紹介するなんて駄目だよ」と言い、あずかりやさんのことについて聞き出します。

実はあずかりやさんの営業時間の7時開店、11時から15時までいったん閉めて、その後19時まで、というのは、この時あくりゅうが提案したものでした。営業中は目印にのれんをかけるというのもあくりゅうの案です。

あくりゅうの質問に、まっすぐに誠実に答え、「自分にできることをしたい」と語る桐島青年に、あくりゅうは何か思うところがあったようでした。

「俺が客第一号になる」と言って、ママからもらった2万円を渡し、ブンをあずけ、芥川龍之介と名乗って出ていきます。

あずけられる200日の間、ブンは桐島青年の切り盛りするあずかりやさんが繁盛していく様子を奥の部屋から感じていました。

ところが、200日目、あくりゅうは現れず、ブンは桐島青年のものになります。ブンは、お店の小上がりに置かれました。

開店から8年後、桐島青年25歳の時に、あの相沢さんがやってきたこともブンは知っていました。そして、相沢さんが持ってくる点字本がブンの上に置かれて店主に読まれるスタイルになります。

その後、ブンはとてもリアルな夢を見ます。読んでる読者も本当に夢?と思うような。

それはあくりゅうがあずかりやさんを訪ねてきて、ブンと会話するのです。

あくりゅうは教師になっていました。ブンは思います。

本当はあくりゅうは最初から父親のような教師になりたかったんじゃないか。大好きな父親が、夢夢と言うからそれにつきあっていたけれど、本当は教師になりたかったんだと。あくりゅうには、いい友人が多く、まともを引き寄せる才があるから生徒をまっすぐ育てられるとブンは思います。

あくりゅうのママの願いは、あくりゅうに笑って生きて欲しいということ。それを叶えられてよかったとブンは思うのです。

夢じゃないと思いたい内容です。

ブンの夢じゃないならプロローグは

もしブンの夢ではなく、本当にあくりゅうが教師になっていたのなら、それはきっと国語の先生でしょう。

そして、プロローグで「ぼく」が手紙を書いた相手の先生はあくりゅうなのではないでしょうか。そうだといいなと思います。

第2話 青い鉛筆

第2話の語り手は、女子中学生の正実ちゃん。正実ちゃんには障がいを持った直樹くんという弟がいます。

お母さんは正実ちゃんを『お姉ちゃん』と呼び、直樹くんの世話でいっぱいいっぱいです。お父さんはそんなお母さんと協力することもなく、離婚してしまいました。ふたりの名付け親で、正直であることを大事にしていた鎌倉のおばあちゃんは亡くなりました。

正実ちゃんは、入学した中学のクラスで、小学校が同じだった由梨絵と一緒の4人グループで仲良くしています。由梨絵は小学校の頃から素敵で目立つ女の子でした。由梨絵に声をかけられ、遠足前にグループができてほっとしていたところに、転校生がやってきました。

転校生は織田パトリシア。金髪で青い瞳でスター性のある子。由梨絵が気にかけているのがわかって、正実ちゃんは自分が織田さんと交換されてしまうのではないかと不安になります。5人グループは居心地が悪いからです。

遠足が近く、グループがだいぶ出来上がっていたクラスで、正実ちゃんもグループからはずされたくありません。

ある日、織田さんのペンケースの中に入っている青い鉛筆を見てみたいな、と由梨絵が言います。

正実ちゃんは、役に立ちたい思いからつい勝手にその青い鉛筆を持ってきてしまいました。由梨絵とグループの子たちは驚きます。彼女たちの驚いた顔を見て、正実ちゃんもしまった、と思うのですが、青い鉛筆を返せないまま「泥棒になってしまった」という罪悪感に落ち込みます。

結局持ち帰ってしまった鉛筆を、正実ちゃんはそっと返すつもりでしたが、弟の直樹くんに鉛筆を嚙まれてしまい、歯形がついてそっと返す案はなくなってしまいました。

しかも、鉛筆を取り返すと泣き出した直樹くんに、お母さんは直樹くんを心配するばかり。正実ちゃんは家出しようと思います。

そこで、正実ちゃんは明日町こんぺいとう商店街にやってきました。その商店街は、「楽になる扉がある」と言って、お母さんが時々やってくるところです。

正実ちゃんにも、幼い頃、お母さんとふたりでこの商店街でソフトクリームを食べた記憶がありました。

そして、あずかりやさんを見つけます。

正実ちゃんは、300円払って鉛筆をあずけ、そのまま引き取りに来ないことにし、罪悪感から解放されます。

そのあずがりやさんのガラスケースの中の「星の王子さま」を見た正実ちゃんは、かつておばあちゃんもその本を自分にくれたのに全然読んでいなかったことを思い出します。

このガラスケースの中の「星の王子さま」については「あずかりやさん」を読むとわかります。

家出はやめて帰った正実ちゃんは、「星の王子さま」を探しますがありません。お母さんに聞くと、直樹くんの部屋にあるといいます。

直樹くんにわかるのかと不思議がる正実ちゃんですが、直樹くんはある場所で、「星の王子さま」を長い間じっとして見ていたのだそうです。それで、正実ちゃんが持っていることを思い出したお母さんは、家でも読んであげていたのでした。

正実ちゃんは、おばあちゃんがくれたその本を読まなかったことを後悔します。そして正直であることを大事にしていたおばあちゃんを思い出して、織田さんに青い鉛筆を盗んでしまったことを話そうと決めます。

その後、正実ちゃんは織田さんと一緒に青い鉛筆を受け取りにあずかりやさんへ行きます。

ふたりの間でどんなやりとりがあったかは、ぜひ「あずかりやさん~桐島くんの青春~」を読んでみてください。

20年後の正実ちゃんは

中学生の正実ちゃんが、あずがりやさんの店主・桐島透を「甘えていい大人」と感じて店を出たその後、物語は20年後に飛び、「また、盗んだ」から始まります。

大人になった正実ちゃんは、家を出ておばあちゃんが住んでいた鎌倉の家で暮らしながら、ファミレスの雇われ店長をしています。盗んだのは彼のライター。

『お姉ちゃん』から逃げ、いろんな男性とつきあったけど長続きもせず、大人になった正実ちゃんはいろいろ複雑な思いを抱えているよう。

月に1度、お母さんと直樹くんがファミレスにやってきますが、そこで「星の王子さま」を暗唱し始めた直樹くん。

あずがりやさんのファンなら絶対気づくと思いますが、明日町こんぺいとう商店街にある、お母さんが楽になる扉は、やはりあずがりやさんでした。

そして、ガラスケースの中にあった「星の王子さま」を開いてじっと見ている直樹くんの横で、暗記している「星の王子さま」をゆっくり音読してくれたのは、やっぱり桐島青年だったです。

それらを一度に理解し、お母さんの想いも想像できた正実ちゃんは、やっぱり大人になったのですね。正実ちゃんは、直樹くんにある提案をします。

この第2話・青い鉛筆は、中学生くらいの女の子たちの複雑な友達関係にも共感したし、お母さんのつらさも想像できて、おばあちゃんの存在や、あずかりやさんの存在のあたたかさに感動しました。

第3話 夢見心地

第3話の語り手は、あずかりやさんのガラスケースの中にいる『オルゴール』。

オルゴールは、「あずかりやさん」の中の第3話・トロイメライで登場します。

ガラスケース曰く『ねずみじいさん』こと・ある大企業の社長が、条件付きで50年あずけていったものです。

オルゴールは、売れば六本木にマンションが買えるほどの高価なアンティーク・オルゴールです。

そのオルゴールが作り出された時から今までの、長い長い月日が語られています。

  1. 120年前のスイスで、ゼムスというオルゴール職人が、わが子の誕生を願ってトロイメライのオルゴールを作る
  2. オルゴールはゼムスの奥さんに大切にされるが、出産時に奥さんはお腹の子と一緒に亡くなる
  3. ゼムスは20年オルゴールを作らなかったが、ある貴族の娘クララの誕生日祝いにオルゴールを注文され、クララにトロイメライを贈る
  4. 耳の聞こえないクララがオルゴールを聴くうち聴覚を取り戻すが、回復するにつれオルゴールは聴かれなくなっていく
  5. 大人になったクララは駆け落ちをする資金のため、オルゴールを古道具屋に売ってしまう
  6. 高級品となっていたゼムスの作品は、古道具屋からオーストリアのアンティークショップ・Fの店に高値で売られる
  7. Fの店の店主は、オルゴールを売らずに2,30年熟成させる
  8. Fの店の店頭に出されるが、店主のファースは売る相手を選んでいるようでなかなか売られないまま値が上がる
  9. 外国から新婚旅行でやってきた、地味な夫婦に気に入られ、ファースは値段をずっと下げてその夫婦に売る
  10. 飛行機に乗って日本へ
  11. 地味で控えめでとてもやさしい奥さんに愛されて、オルゴールは幸せに
  12. ゼムスの奥さんのことがあって心配だったが、奥さんが無事に男の子を出産して、オルゴールはさらに幸せに
  13. 成長して反抗期の息子に、オルゴールは庭へ放り投げられてガラスが割れるがすぐ修理される
  14. 仕事人間の旦那さんは家にいないことが多かったが、夜オルゴールを聴いていた
  15. 夫婦仲もよく、息子も悪い子ではなく、幸せだったが、夫婦は年を取りオルゴールは歌いながら奥さんを看取る
  16. 旦那さんも弱ってゆき、遺書を残してオルゴールを「あずかりや」という小さな店にあずけることにして亡くなる

と、ここまでの長い道のりです。

オルゴールは、あずかりやにあずけられる50年が、自分の最期の時間だと覚悟しています。いろいろあった120年で、なぜゼムスが自分を手放したかの謎が解けました。生みの親であるゼムスは、子どもであるオルゴールに幸せな未来をあげたかったのだと、オルゴールは考えます。そして幸せをもらったオルゴールは、こんどは誰かを幸せにしたい。

あずかりやさんに来て、初めて店主・桐島透に受け止められた時、オルゴールは自分が受けた愛情を注ぐ相手が桐島青年だと感じました。そして、旦那さん(ねずみじいさんこと・大企業の社長)が自分に与えた任務は、この桐島青年を幸せにすることだと確信します。

ただ、オルゴールが残念なのは、桐島青年がオルゴールの聴き方を知らないこと。

いつも小上がりの畳の上に置いて聴くけれど、本当はオルゴールを最高の状態で聴くには共鳴台が必要なんですって。クララは使っていました。

だから、オルゴールはいつか文机の上に置いてくれないかな、せめてガラスケースの上でも!と思っているのでした。

このお話の最後に、少し第2話・青い鉛筆のシーンがオルゴール目線で登場します。

第4話 海を見に行く

第4話の語り手は、なんと学生時代の桐島透くん。

わかってはいたけど、桐島透くんはとても優秀で、学級委員をしていて東大受験を目指しています。そして陸上部。

盲学校の高等部普通科担任の柳原先生と桐島少年との会話で物語は始まります。あくりゅうに「盲学校の教師ってどんなだ?」と聞かれた時、桐島少年が思い出したのは、間違いなくこの柳原先生でしょう。

柳原先生は、桐島少年の東大受験も陸上部の活動も応援してくれています。そしてある日、桐島少年に転校生の案内役を頼みます。

転校生の名前は石永小百合。桐島少年は、映画女優のばったもんみたいな名前と思います。桐島透というひとは、こんなことを思うひとだったんだなあとわかります。

この石永小百合さんは、初対面から態度が大きく、遠慮ない物言いで、桐島少年は苦手に思ったようです。ところが、ほかの生徒には石永さんはいい印象を持たれている様子。

桐島少年は、音楽科の生徒の河合さんのファンでした。とはいっても、話したことはなく、河合さんの弾くピアノのファンなのでした。桐島少年は、絶対音感もあるらしく、知らない曲でも聴いたら音符にして楽譜を調べて曲の題名がわかってしまうそう。

そして、河合さんをだしにして、石永小百合にまんまとだまされ、桐島少年は石永さんとふたりで海を見に行くことになります。

その道中、実は石永さんは思ったほど悪い奴じゃないと、桐島少年は少しずつわかってくるのでした。

海に着いた時、ふたりは、おばさんとおばあさんの間くらいの女性に会います。短いやり取りではあるものの、この女性が素敵なひとだとわかるのですが、この女性は、たぶん青い鉛筆の正実ちゃんのおばあちゃんではないかと思いました。

場所が鎌倉であることと、女性の家の庭に蜜柑の木があることと、年齢が計算するとだいたい合うことと、嘘をつかず正直でありながら相手を傷つけない言葉を選べるひとだからです。

第4話「海を見に行く」を読んでもらいたいポイントは

  • 桐島少年自身が語り手で、お店を始める前の彼のことがわかる
  • 桐島少年の友達・西野くんと、石永さんのことがわかる
  • 桐島少年の優秀さがわかる
  • 柳原先生のことがわかる
  • 桐島少年のお父さんが登場する
  • 桐島少年がトロイメライと石鹸に特別な思いを持っている理由がわかる

西野くんと石永さんは、これ以降にも登場します。

オルゴールから流れるトロイメライに、桐島くんがしばらく聴き入った理由も、ここにきてわかりました。

桐島少年は、なぜ東大受験をせずに17歳であずかりやを始めたのでしょうか。

悲しい内容も含まれてはいますが、ぜひ読んでみてください。

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